ドラマ「ボッシュ」タトゥーは本物だった!タイタス・ウェリバーと原作者が作り上げたハリー・ボッシュ

作品レビュー
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ドラマ「ボッシュ」は長いことプライムのリストに載っていたけれど、なんとなく自分のタイプのドラマではないような気がして、手を伸ばす気になれませんでした。
こんな言い方をしては申し訳ないけど、ある時ほかに見たいものがなかったので、一応犯罪ドラマだし、、と軽い気持ちで見始めたのです。そうしたら止まらなくなった。
どうして好みのドラマではないと思ったかというと、銃撃戦が多そうだなと想像できたので。最近はアクションものを敬遠していました。
それでも、なんとなく見始めてしまったのは、冒頭に流れる音楽のせいかもしれません。
ジャズっぽい曲が流れるんです。いかにもハードボイルド!お膳立て良すぎますよね。
この曲に乗せられて、ボッシュの旅が始まりました。

ドラマ「ボッシュ」はどうして作られたか?

「ボッシュ」の原作は、マイケル・コネリーが1992年に発表したデビュー小説『ザ・ブラック・エコー』です。主人公ハリー・ボッシュは、その後24冊以上の長篇に登場する人気キャラクターとなりました。
コネリーはフロリダ州立大学でジャーナリズムと創作を学んだのち、犯罪記者として働きました。ロサンゼルスに移住した翌日に起きた殺人事件を取材したことが『ザ・ブラック・エコー』の着想につながったといいます。
ドラマ「ボッシュ」シリーズはエリック・オーバーマイヤーによってAmazon向けに開発され、2014年初頭にパイロット版がオンライン上で公開されました。視聴者の反応を見てから正式な制作が決定されるという、当時としてはユニークな方式がとられました。
ボッシュを演じたタイタス・ウェリバーはコネリーの小説の熱烈なファンであり、コネリー自身がボッシュ役に指名した俳優です。
原作者がキャスティングに直接関わるというのも、このドラマの大きな特徴ですが、コネリーは「ボッシュ」のエグゼクティブ・プロデューサーとして、全シーズンに関与しています。演じるウェリバーと原作者のコネリーが相思相愛?であったことも、このドラマを成功させた大きな要因だったのではないでしょうか。
2014年の配信開始当時、こういった刑事ドラマでは「スッキリ解決型」の一話完結が主流でしたが、「ボッシュ」は複数エピソードにまたがる長尺のドラマとして、事件の謎と複雑な人間関係を描き、ストリーミング時代のプレステージ犯罪ドラマの原型を静かに作り上げた作品として評価されています

ハリー・ボッシュとはどんな人物か?

名前の由来

ハリーの本名は「ヒエロニムス・ボッシュ」。15世紀のオランダ人画家ヒエロニムス・ボスにちなんで名付けられました。
画家のボスは宗教的な地獄絵や怪奇幻想画で知られる画家で、特に地獄の悪魔的描写が有名。
殺人事件の闇を追い続ける刑事に、地獄を描いた画家の名を与えたコネリーの命名センスには唸らされます。
コネリーは、ロサンゼルスを「現代における地獄絵図」として描くために、このキャラクターに”ボス”の名を与えたといいます。

ボッシュの生い立ち——孤独からはじまる人生

ボッシュの母親はハリウッドで働く娼婦で、ボッシュが11歳のときに殺害されました。父親は後に知れる有力な弁護士でしたが、ボッシュは父不在のまま少年時代を過ごすことになります。
母親に育てられていたボッシュでしたが、12歳のとき、母が育児不適格と判定され孤児院へ送られ、その後、里親家庭を転々とする生活が続きます。

 

テレビ版ボッシュは湾岸戦争(1991年)の退役軍人という設定で、特殊部隊のトンネル掃討任務の経験者です。また、9.11後に再入隊し、アフガニスタンでも従軍しています。(原作小説ではベトナム戦争の「トンネルラット」という設定でしたが、現代に合わせて変更されました)

信条——「Everybody counts, or nobody counts」

ボッシュは、有名人であろうと無名の家出少年であろうと、すべての殺人事件を同じ熱量で追い続けます。「誰もが重要か、さもなくば誰も重要でない」というモットーがその姿勢を端的に表しています。
このモットーは、娼婦だった母の死が長年未解決のままにされてきた経験から生まれた、ボッシュ自身の痛みでもあります。

ジャズと家

ボッシュはスタジオ・シティの丘の上の張り出し型(カンチレバー)の家に住んでいます。リビングからロサンゼルスの街を見渡せるデッキに座り、ジャズのレコードを聴くひとときが、この男の数少ない安らぎです。
ちなみに、このボッシュにピッタリの住居はセットではなく実在します。
住所はブルー・ハイツ・ドライブ1870番地、ハリウッドヒルズ・ウエスト。

 

原作小説では「丘の上からLAの盆地を見渡せる場所」として描かれていて、ボッシュはその眺めが好きでこの家を手放せないという設定になっています。

 

木造の張り出し型の一室が、鉄の支柱3本で支えられているなんて、日本では恐ろしくて住む気になりませんよね。ただ、LAの夜景が美しすぎて、この夜景を借景にできるなんて、最高の贅沢に思えます。

ハリウッド署は本当に存在するのか

 

私がドラマを見始めて、最初に知りたかったのが、「ハリウッド署って存在するの?」ということでした。
ロサンゼルス市警察(LAPD)には、確かに「ハリウッド署(Hollywood Community Police Station)」が存在します。

 

主な担当地区は、ハリウッドのほか、ハリウッド・ヒルズ、マウント・オリンパス、ロス・フェリス、メルローズ地区などを含み、世界中から観光客が集まる地域を受け持っています。
そのため、観光名所の警備やアカデミー賞授賞式などの世界的なイベントが管轄内で行われるため、警備体制は非常に高度です。

タトゥーの謎——あれは本物だった

刑事ボッシュにはタトゥーがあります。それも1つや2つではありません。
最初、これはボッシュという人物に必要な設定の1つかと思っていました。
でも、これは演じるウェリバー本人のものであることが調べてみるとわかりました。

 

ウェリバーがボッシュに決まったとき、彼のタトゥーを最初はメイクで消す予定だったようです。でも、そのためには毎回メイクに1時間余分にかけることになるので、そのままキャラクターに加えることになったようです。逆転の発想ですね。
ここでまた新たな疑問が。。
LAPD内では、タトゥーは認められているのか?ということです。

LAPDのタトゥー規定はどうなっているのか

LAPDは、勤務中に見えるタトゥーを禁止しています。ただし、追加の衣服(長袖など)やメイクアップで隠せばよいとされており、タトゥーのある応募者はケースバイケースで個別に審査されます。
つまり、規則上はアウトではないが、見せること自体は好ましくないというグレーゾーンなのです。
ドラマの中で女性警部が嫌っていたのは、「規則違反だから」ではなく「プロとして見苦しい」という彼女の価値観からの反応だったと考えるのが自然です。

 

実際の警察内でも世代や価値観によって受け止め方はかなり違うようで、「10年のキャリアの中で、タトゥーだらけの先輩も後輩もいた。私は開放的な見方をしている。
ただし、人種差別的・ギャング関連・わいせつなタトゥーは許容できない」 という現役警官の声もある一方、旧世代からは「犯罪者と同じ見た目になってどうする」という批判的な意見も根強いようです。
引用元:Officer.com

ボッシュのジャズ——その正体

もう1つ、ボッシュを語るうえで外せないものがあります。
背景に流れる”ジャズ”のメロディー。

仕掛け人はコネリー自身だった

コネリーはこう語っています。「ジャズはアウトサイダーの音楽だと思う。特にサックスは。それは生来、孤独な音がする。そしてそれこそがハリー・ボッシュの本質——真実を、自分自身の理解を、孤独に追い求めるということだ」。

 

そして驚くべきことに、「ジャズへの愛は、最初はキャラクター作りのための調査として始まったんです。でも、調査しながら実際に聴かずにはいられない。そうして夢中になってしまった。気がついたら父親(注:コネリーの父はジャズファンだった)と同じになっていた」とコネリーは語っています。
引用元:Jazz88.FM

ドラマで流れる主なジャズ曲

シーズン1で流れた曲には、フランク・モーガンの「ララバイ」、ハンプトン・ホーズの「ザ・サーモン」、アート・ペッパーの「パトリシア」などが含まれています。

 

ドラマ全体で使われた曲としては、マイルス・デイヴィスの「ソー・ホワット」、デイヴ・ブルーベック・カルテットの「テイク・ファイヴ」、チャールズ・ミンガスの「C・ジャム・ブルース」、ジョン・コルトレーンの「ソウル・アイズ」、チェット・ベイカーの「イッツ・オールウェイズ・ユー」なども登場しています。

 

もし、今まであまりジャズを聴いたことがない方でも、「ボッシュ」で流れるジャズの音色に興味を持たれたら、ドラマがきっかけとなって原作者のコネリーのようにだんだんと深みにはまるかもしれませんね。
もう一つ付け加えるとすると、ボッシュのオープニングに使われているテーマ曲は、Caught A Ghost(コート・ア・ゴースト)というバンドの「Can’t Let Go」です。

 

Caught A Ghostはロサンゼルス発のインディー・エレクトロソウルバンドで、ジェシー・ノーランとスティーブン・エデルスタインによるユニット。モータウンやスタックス/ヴォルトなどクラシックなソウルの要素に、ドラムステップや90年代ラップ、現代的なエレクトロニカの影響を混ぜ合わせた独特のサウンドが特徴です。

 

純粋なジャズというよりも、どこかブルージーで夜の空気を感じさせるサウンドで、あのLAの夜景とボッシュのシルエットにぴったり合っていますよね
引用元: MysteryTribune

さいごに

今も、ボッシュを流し見しながら、これを書いています。
最初は、私との相性は良くなさそうだったけど、気になるところだけ見直したりしているうちに、ボッシュという人間の家族愛や孤独をだんだんと深く感じるようになりました。

 

ボッシュはあまり感情が顔に現れません。表情筋が動かない。でも、目には表れるんですね。
娘に対する愛情。元妻に対する未練(と私は感じる)。事件の被害者や弱者に対する対応にもそれは表れます。

 

「ボッシュ」はシーズン1〜7まであり、全70話以上。Amazonプライムビデオで2015年から2021年まで配信されたAmazonオリジナルドラマの最長シリーズです。続編「ボッシュ:レガシー」ではLAPDを退職した後の私立探偵としての姿が描かれます。

 

ボッシュとエレノアが離婚した理由が、ドラマの中では特に描かれていなかったのですが、仕事に全てを捧げるボッシュと、同じく強い使命感を持つエレノア。似た者同士だからこそ、うまくいかなかったのかもしれません。
次回は、私立探偵となったボッシュの活躍を「ボッシュ 受け継がれるもの:BoschLegacy」でご紹介したいと思います。

 

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